欠勤や遅刻・早退をした場合、給与計算では欠勤控除を行います。
しかし、欠勤控除には法令による規定がありません。給与計算の際に「どのような計算方法になるのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。
そこで今回は、従業員が欠勤したときの計算方法について、詳しく解説します。
欠勤控除を正しく理解し、ミスのない計算をしましょう。
欠勤控除の考え方
欠勤控除の考え方には、「ノーワーク・ノーペイの原則」があります。
これは、「労働していない分の給与は発生しない」というものです。
欠勤や早退などの理由で予定時間を働かなかった従業員は、この原則の対象になります。
そのため、企業は月給・日給などの賃金を支払う必要がありません。
欠勤控除の計算方法
欠勤時
月給÷月の所定労働日数×欠勤日数
【例】月給:20万円、月の所定労働日数:20日、欠勤日数:2日の場合
「20万円÷20日×2日=2万円」の計算式が成り立ちます。
遅刻や早退時
月給÷月の所定労働時間×欠勤時間
【例】月給:20万円、月の所定労働時間:160時間、1時間遅刻した場合
「20万円÷160時間×1時間=1,250円」の計算式が成り立ちます。
欠勤控除を適用しないケース
有給休暇の取得
通常の出勤日に有給休暇を使用した場合は、欠勤控除の対象になりません。
企業は就業規則などに基づいて、所定の賃金を支払います。
会社都合による休業
会社都合で出勤日を休業とした場合は、欠勤控除の対象になりません。
会社側は、「休業手当」として平均賃金の60%以上を支払う必要があります。
ただし、自然災害などによる休業の場合は、賃金を支払う必要はありません。
欠勤控除の注意点
欠勤控除を就業規則に明記する
欠勤控除は法律による定めがありません。
だからこそ、欠勤控除について就業規則に明記する必要があります。
給与計算に関する決まりがないと、従業員の欠勤控除が発生したとき「知らないうちに差し引かれた」などのトラブルを招きかねないからです。
従業員全員がわかるようにルールを決め、周知しましょう。
最低賃金を下回らない
欠勤控除の計算では、控除後の賃金が最低賃金を下回らないよう気をつけましょう。
特に注意すべきなのは、「数日だけ出勤し、残りは欠勤した」場合に時給換算で最低賃金を下回る可能性があることです。
このケースに対処するため、給与計算を欠勤日数ではなく、出勤日数で行うことを就業規則にも明記しておきましょう。
残業代の扱いを明確にする
「みなし残業」について就業規則に定めていれば、みなし残業分を欠勤した際に控除できます。
しかし、控除後のみなし残業代が何時間分になるのかを計算し、その月の残業時間と比べてみなし残業分を超えているかの確認が必要です。
控除後のみなし残業代の分を超えていた場合は、超過分の支払いが発生するため取り扱いが複雑になります。
そのため、みなし残業代を控除の対象にしない企業が多いです。
税金の扱い
欠勤控除額は非課税となります。
課税合計額を計算するには、総支給額から欠勤控除額を差し引きます。
そのため、欠勤分の税金額は低くなります。
端数処理
欠勤分より多くの時間を控除するのは違反です。
月給制の従業員について、欠勤控除では基本的に端数を切り捨てます。
端数を切り上げすると、労働した分も控除してしまう可能性があるからです。
まとめ
欠勤控除の考え方には、ノーワーク・ノーペイの原則があり、欠勤や遅刻・早退などが給与から差し引かれます。
しかし、有給休暇や会社都合による休業など欠勤控除の対象とならないものがあります。
正しく欠勤控除を行うため、欠勤控除とならないものを把握して計算を行いましょう。